やりたい仕事が見つからない人へ。動けなくなる本当の理由

踏み出す前に

「やりたい仕事、向いている仕事を探しましょう」

就職の本にも、サイトにも、決まってこう書いてあります。
それで素直に考えてみる。……見事に何も出てこない。紙に「好きなこと」を書き出そうとして、ペンが止まる。強いて言えば寝ることと、スマホを見ること。こんなの仕事になりません。

で、思うわけです。
「やりたいことすら無い自分は、就職の入口にも立ててないんじゃないか」って。

夜中に求人サイトを開いて、どの求人にも心が動かなくて、そっと閉じる。動けない自分に、また少し焦る。あの夜を過ごしている人に向けて、今日は書きます。

先に言いたいのは、これです。

やりたいことが出てこないのは、あなたが空っぽだからじゃありません。
探す順番が、逆なだけです。


🧭 「やりたいこと」から選べた転職はほとんどなかった

私は20代から30代で、7回転職しました。

これだけ動いていれば、さぞ「やりたいこと」を追いかけてきたんだろうと思われそうですが、実際は逆です。7回のうち、「これがやりたいから」で会社を選べたことは、正直、ほとんどありません。

きっかけは毎回、もっと生々しいものでした。人間関係がしんどかったから。今の給料じゃ生活が苦しかったから。このままだと心が持たないと思ったから。やりたいことに向かって進んだんじゃなくて、その時その時の「まずい状況」から、出口を探して動いてきただけです。

じゃあ、その転職人生が全部空っぽだったかというと、そうでもないんです。

働いてみて初めて、「あ、自分は一人で黙々とやる作業のほうが向いてる」と分かった職場がありました。「人に何かを説明するのは、案外苦じゃないな」と気づいた仕事もありました。逆に、「これだけは二度とやりたくない」がはっきりした会社もあります。

つまり、順番が逆だったんです。
やりたいことが先にあって、仕事を選ぶんじゃない。働いてみた結果として、やりたいこと(と、やりたくないこと)が、あとから見えてくる。少なくとも私の7回は、全部そうでした。

❌ 詰む順番

やりたいこと探し → 仕事を選ぶ
(材料がないので、何も出てこない)

▼ 入れ替える

⭕ 動ける順番

働いてみる → やりたいことが、あとから見えてくる
(経験がそのまま材料になる)


🌀 「やりたいこと探し」が先に来ると、詰む理由

考えてみれば、当たり前の話なんですよね。

やりたいことって、経験の中からしか出てきません。行ったことのない街を「好きな街」に挙げられないのと同じで、やったことのない仕事を「やりたい仕事」には挙げられない。

なのに、就職の入口で「まずやりたいことを明確に」と言われる。
経験がまだ少ない人ほど、手持ちの材料が少ないのに、材料が要る問いを先に突きつけられている。出てこないのは当然で、能力の問題でも、意欲の問題でもないんです。

もっと言うと、「やりたいこと探し」には副作用があります。
考えている間、一歩も前に進まないことです。自己分析の本を読んで、診断テストをやって、ノートに書き出して。やった感はあるのに、現実は一ミリも動いていない。そして時間だけが過ぎて、焦りが増える。焦ると余計に「ちゃんと決めてから動かないと」と慎重になる。この無限ループが、一番人を消耗させます。

🔁 「探し続ける」の無限ループ

自己分析 → 診断テスト → ノートに書き出す →「やった感」はあるのに現実は1ミリも動かない → 焦る → もっと慎重になる → また考える……。このループが、一番人を消耗させます。

私が7回分の遠回りで学んだのは、このループの抜け方は一つしかない、ということでした。
「やりたいこと」を、いったん保留にする。諦めるんじゃなくて、順番を後ろに回すんです。


🏠 先に整えるのは「生活の土台」でいい

やりたいことを保留にしたら、代わりに何を基準に動くのか。

🏠 まず目指すのは、これだけ

毎月決まった日に給料が入り、家賃と食費の心配をしなくていい状態。やりたいことは、それを考えられる余裕ができてから。

「そんな消極的な理由で仕事を選んでいいの?」と思うかもしれません。いいんです。というより、そのほうが強い。

生活が不安定なまま「やりたいこと」を考えても、出てくるのは「とにかくこの不安から逃れたい」だけです。お腹が減っているときに献立の好みを聞かれても、「何でもいいから食べたい」としか答えられないのと同じ。やりたいことを考えるには、それを考えられるだけの余裕が先に必要です。

私自身、生活がいっぱいいっぱいの時期に考えた「やりたいこと」は、あとから振り返ると全部、ただの現実逃避でした。落ち着いた給料をもらえるようになってからのほうが、よっぽど地に足のついた「次はこうしたい」が出てきました。皮肉なものですが、やりたいことは、やりたいことを探すのをやめた後にやってきました。


🚶 で、実際どう動くか。現在地で道は分かれる

「土台を先に」と決めたら、動き方は今の自分の状況で変わります。

💼 職歴がある程度あるなら

リクルートエージェント・dodaなど大手の求人数が武器。土台の選択肢を広く見られる。

📄 職歴が薄い・フリーター長いなら

書類選考なしのルート(就職カレッジ等)。書類という不利な土俵を避けられる。

職歴がある程度あるなら、リクルートエージェントやdodaのような大手は、求人の数そのものが武器になります。土台を作るための選択肢を広く見られるので、素直に使えばいい。

一方で、職歴が薄い・フリーター期間が長い、という場合は、正直、大手の書類選考が最初の壁になりやすいです。職務経歴の欄が薄いと、中身を見てもらう前の段階で通りにくい。これはあなたの人間性の問題ではなく、単に書類という土俵が不利なだけです。

その場合は、書類選考を挟まないルートを選んだほうが早い。
たとえば『就職カレッジ(ジェイック)』は、書類選考なしで複数の企業と直接会える仕組みを持っています。条件は、数日間のビジネス研修をやり切ること。参加者の声を読む限り、この研修は決して楽ではなさそうです。挨拶や名刺交換のような基本を、みっちりやるようです。

ただ、これは「型にはめられる訓練」というより、面接という場で戦うための装備を、先に貸してもらえる期間だと私は捉えています。職歴で語れないなら、当日の振る舞いと「研修をやり切った」という事実で語るしかない。その材料を入口で持たせてくれる場所、という理解です。

どのルートを取るにしても、基準は一つでいいです。
「やりたいことが見つかる場所か」ではなく、「生活の土台が先に手に入る場所か」。選ぶ基準が軽くなると、動くのも軽くなります。


☀️ やりたいことは、給料をもらいながら探せばいい

最後に、順番の話をもう一度だけ。

やりたいこと探しを保留にするのは、夢を捨てることじゃありません。探す場所を、頭の中から、現場に移すだけです。

働き始めると、嫌でもデータが貯まります。この作業は苦じゃない。この時間は地獄だ。こういう人とは組みやすい。頭の中で百時間考えても出てこなかった「自分の向き不向き」が、給料をもらいながら、勝手に集まってくる。

私の7回は、遠回りだったと思います。でも、あの7回ぶんのデータがなければ、今の自分が何をしたいかなんて、いまだに一行も書けなかったはずです。

「やりたいことが無い」は、止まる理由じゃなくて、まだ材料が集まっていないというだけの話です。材料は、机の前では増えません。
まずは、雨風がしのげる場所をひとつ確保する。やりたいことは、そこから給料をもらいながら、ゆっくり拾っていけばいい。順番さえ入れ替えれば、あなたはもう、動けます。

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