会社が「世界の全部」だった私が、1円の副業で怖くなくなった話

踏み出す前に

会社にいると、たまに息が詰まりませんか。

上司の一言に、必要以上に落ち込む。飲み会の断り方で悩む。評価面談の前は、胃が重くなる。
別に、命まで取られるわけじゃない。分かってるんです。でも、なんであんなに苦しいんだろう、とずっと思っていました。

今なら、少し分かります。
あれは、その会社が「自分の世界の全部」になっていたからなんですよね。

収入も、居場所も、自分の価値も。ぜんぶ一つの会社が握っている。そう思っていると、その中の小さな出来事が、いちいち大事件に感じてしまう。逃げ場がないんです。


副業を「お金のため」だと思っていた頃

私が副業に手を出したのは、正直、お金が欲しかったからです。

給料が上がらない。将来が不安。もう一つ、収入の柱があれば安心できるかな、と。よくある動機ですよね。

最初にやったのが、せどりでした。安く仕入れて、高く売る。中国から商品を仕入れて売る「中国輸入」から始めたんですが、これが見事に惨敗しました。同じものを売る人が山ほどいて、値段の叩き合いになるだけ。ぜんぜん売れませんでした。

心が折れかけて、中古せどりに変えました。中古は一点ものが多くて、同じ土俵で叩き合う相手が少ない。そこでようやく、ぽつぽつと売れ始めたんです。

そして、忘れられない瞬間が来ます。
自分が選んで仕入れたものが、知らない誰かに売れて、数百円の利益が出た。たった数百円です。会社の給料に比べたら、笑っちゃうくらい小さい。

でも、その数百円は、会社が一切関係ないお金でした。


変わったのは、金額じゃなかった

あの数百円を手にしたとき、頭の中で何かが、かちっと切り替わった感覚がありました。

「あ、自分は、会社の外でも1円を生み出せるんだ」

大げさに聞こえるかもしれません。数百円で何が変わるんだ、と自分でも思いました。でも、変わったのは金額じゃなくて、感覚のほうでした。

それまで私は、心のどこかで「この会社をクビになったら終わりだ」と思っていたんです。だから、理不尽なことにも耐えて、言いたいことも飲み込んでいた。会社にしがみつくしかない、と無意識に思い込んでいた。

でも、会社の外でも、ほんの少しだけどお金を生めると分かった。
そうしたら、「最悪、ここがダメでも、何とか食べていく道を自分で探せるかもしれない」と、少しだけ思えるようになったんです。

その「少しだけ」が、想像以上に大きかった。

たった数百円で世界が変わるなんて、当時の自分に言っても信じなかったと思います。でも、金額の問題じゃなかったんですよね。「会社の外に道がある」と体で知れたことが、全部でした。


依存が外れると、会社が冷静に見える

面白いもので、会社への依存がちょっと外れると、今の会社が、急に冷静に見えるようになりました。

前は、上司の機嫌が、その日の自分の全てでした。今は、「まあ、この人の評価が自分の人生の全部じゃないしな」と、一歩引いて見られる。同じ理不尽を言われても、受け止め方が変わったんです。

不思議なことに、しがみつくのをやめたら、逆に仕事が少しラクになりました。
「嫌われたらどうしよう」で動いていたのが、「まあ、いざとなれば何とかなる」に変わると、変に媚びなくて済む。結果的に、仕事の判断もまっすぐできるようになった気がします。

転職を考えるときも、そうです。
「今の会社を辞めたら生きていけない」という前提で選ぶ転職と、「別にここじゃなくても、自分は何とかする」という前提で選ぶ転職。同じ求人を見ても、選び方がまるで変わります。前者は、不安から逃げる転職になりがち。後者は、落ち着いて選べる。

会社に依存しきっていると、どうしても、焦って選んでしまうんですよね。


「独立しろ」という話じゃないです

ここまで書くと、「じゃあ副業で独立を目指せ」という話に聞こえるかもしれません。

でも、違います。
私の副業は、今も月数万円がいいところ。これで食べていくなんて、とても無理です。独立なんて考えていません。

大事なのは、独立できるかどうかじゃないんです。
「会社が全部じゃない」と、体で少しでも知れるかどうか。それだけで、会社との距離感が、健康なものに変わる。

依存しきった相手のことは、人は冷静に見られません。恋愛でも、仕事でも、たぶん同じです。少しでも「なくても大丈夫」と思える相手のほうが、逆に落ち着いて向き合える。会社も、それと似ています。


まず、小さく一回、自分で稼いでみる

だから、もし今、会社がしんどくて、でも動けなくて、という状態なら。
転職サイトを開いて閉じる、をくり返す前に、ほんの小さくでいいので、会社の外で一回お金を生む経験をしてみるのも良いかもしれません。

せどりでも、いらないものをフリマアプリで売るでも、何でもいいです。金額は、数百円で十分。
「会社を通さずに、自分でお金を生めた」という事実が、あなたの中の何かを、少しだけ変えてくれるはずです。

そのうえで、それでもやっぱり今の環境がしんどいなら、そのときは転職を考えればいい。
依存が少し外れた状態で選ぶ転職は、きっと、前より落ち着いた選択になると思っています。焦って決めるより、その一歩を挟むほうが、遠回りに見えて近道だったりします。

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一気に人生を変えなくて、いいんです。まず、小さな逃げ道を、一本だけ自分の手で作ってみる。それだけで、明日の会社が、少しだけ違って見えるかもしれません。

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