新卒の初任給に抜かれた人へ。賃金の逆転が起きる理由とは?

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入ってきたばかりの新卒の初任給を、たまたま知ってしまったあの瞬間。

自分と、そう変わらない。……いや、下手したら向こうの方が上かもしれない。

その数字が、頭から離れない。これまで積み上げてきた数年は、いったい何だったんだろう。そう思うと、その日はずっと、胸の奥に何かが引っかかったままになる。

先に、はっきり言っておきます。

この記事の立場
その悔しさは、正当です。心が狭いわけでも、考えすぎでもありません。ただ、その怒りをぶつける相手を間違えると、損をするのはあなたです。

この「逆転」が本当は何を意味しているのか。そして、悔しさをどこに向ければいいのかを、少し辛口に書いていきます。


その怒り、新卒にぶつけても1円にもならない

逆転を知ったとき、矛先はつい、目の前の新卒に向きます。

「こっちは何年もやってるのに」「まだ何もしてないのに」。気持ちは、よく分かります。

でも、少しだけ厳しいことを言います。

矛先を、間違えている
その新卒は、会社が決めた制度に乗っただけです。彼らを恨んでも、あなたの給料は1円も上がらない。それどころか、職場の空気が悪くなる分、損をするのはあなたの方です。

本当に見るべき相手は、新卒でも、「頑張りが足りない自分」でもありません。その差を平気で放置している、会社のしくみです。ここを取り違えると、一番しんどい方向に、感情が転がっていきます。

たとえば、その新人に仕事を教える日が来たとき。教えている相手の給料が自分と大差ないと知っていたら、指導にも身が入らなくなる。そして、そんなふうに感じてしまう自分に、また少し嫌になる。この二重のダメージが、実はいちばん消耗します。だからこそ、矛先の話を最初にしました。


なぜ逆転は起きるのか。これはあなたのせいじゃない

まず、事実を押さえておきます。逆転は今、あなたの会社だけで起きている珍事ではありません。

2026年度、新卒の初任給を引き上げた企業は67.5%。平均の引き上げ額は9,462円でした。(帝国データバンク 2026年調査)

でも、本当に知ってほしいのは「なぜ引き上げるのか」より、「なぜ、あなたの給料は引き上がらないのか」の方です。ここに、はっきりした理由があります。

会社にとっての、身も蓋もない計算式
初任給は、求人サイトに公開されます。「いくら出す会社か」が一目で分かる、会社にとっての広告です。上げれば応募が増える。効果が数字で見える。

あなたの昇給は、社外の誰にも見えません。上げたところで求人サイトの見え方は変わらないし、効果を測る方法もない。

会社にとって、新卒の給料は”投資”で、あなたの給料は”コスト”です。投資は増やすが、コストは削る。ただ、それだけの話です。

だから、あなたが本当に怒っていい相手は、新卒でも、頑張りが足りない自分でもありません。あなたが積み上げた数年を「増やす投資」ではなく「削るコスト」として扱う、その考え方そのものです。

あなたの頑張りが足りないから抜かれたわけではない。あなたは、会社の数字に出ない場所に、置かれているだけです。

理由は、これだけではありません。もう二つ、知っておいてほしいことがあります。

もう二つの、地味な理由
一つ目。会社の規模が小さいほど、両立できません。新卒の初任給を上げるだけで体力を使い切り、既存社員にまで回す余裕がない中小企業は、少なくないです。

二つ目。そもそも賃金の設計自体が、あなたを抑える形になっています。多くの会社の給与カーブは、入社数年から中堅の時期の昇給を、ゆるやかに保つよう最初から設計されています。今回の逆転は、その構造の上に、新卒の初任給だけが上乗せされた結果です。

そして、正直に、もう一つだけ。

会社はどこかで、こう踏んでいます。「今いる人は、多少不満があっても、そう簡単には辞めない」。

新卒には、他社という比較対象が同時にいくつもあります。だから競争が起きて、お金が動く。あなたには、まだ「今日じゃなくてもいい」と思われている。それだけの違いです。

実は、これを書きながら、私も同じ思いをした夜を思い出していました。

実は、これを書きながら、私も似たようなことがあった時期を思い出していました。

自分より後に入ってきた後輩の待遇を知ったとき、しばらく言葉が出ませんでした。

さすがに職場では言えないので、親友と母にだけ、こぼしました。

あのときの感覚は、今でもよく覚えています。だから、あなたが今かかえているものも、たぶん近いところにあると思います。


逆転を放置する会社が、そっと白状していること

ここが、今日いちばん伝えたいところです。

本当にこわいのは、逆転が起きたこと「そのもの」ではありません。それを、会社が放置していることです。

会社が態度で白状していること
この会社は、「これから来る人」には気前よくお金を出す。でも、「もういる人」には出す気がない。

逆転を直さないという判断は、そのまま”あなたへの評価”として、静かに表れています。

そして、このモヤモヤを感じているのは、あなた一人ではありません。ある調査では、給与の逆転に対して87.5%が「不公平」と感じ、72.2%が「転職を検討する」と答えています。

逆転が起きた会社では、できる人から順に、静かに心が離れていく。あなたのその感覚は、異常でもわがままでもない。ごく自然な、正しい反応です。


なぜ、あなたの給料「だけ」上がらないのか

ここからは、もう一段だけ深い話をします。

そもそも、日本の会社で給料はいつ決まるか。答えは、入口です。入社したときの値段に、毎年すこしずつ足していく。それが在籍者の給料の正体です。

あなたの給料は「今のあなたの実力の値段」ではありません。「昔のあなたの値段+微調整」です。

一方、新卒の初任給は、毎年”市場価格”で更新されます。求人競争にさらされているからです。市場とつながっている値段だけが上がり、切り離された値段は置いていかれる。これが、あなただけ上がらない仕組みの全部です。

給料が上がる瞬間は、実は3つしかない
  • 会社全体のベースアップ:あなたには操作できない
  • 昇格:会社のさじ加減。待つしかない
  • あなたの値段が、市場でもう一度つく瞬間:唯一、自分で作れる

上の二つを待つのが、これまでのあなたでした。頑張りが足りなかったのではありません。自分で作れる三つ目を、まだ使っていないだけです。


どうしたら上がるのか。答えは一つです

三つ目を、自分で作る。外のオファー(内定と年収提示)を、一度本気で取りにいくことです。

辞めるためではありません。自分の値段を、今の市場価格に更新するためです。

順番は、こうです。

値段を更新する、実際の順番
  1. 職務経歴を1枚にまとめる 何を何年、どんな面倒を捌いてきたか。箇条書きで十分です。
  2. 相場を見る 「職種+経験年数」で3〜5件、提示年収の幅をつかみます。
  3. 1〜2件、実際に応募する ここが本番です。提示された額が、今のあなたの”本当の値段”になります。

「眺めるだけじゃダメなのか」と思うかもしれません。ダメです。求人票の数字は”他人の値段”で、オファーの数字だけが”あなたの値段”だからです。会社と対等に話せる材料になるのは、後者だけです。

そして、結果は2つに1つ。どちらに転んでも、損はしません。

どちらに転んでも、あなたの勝ち
提示が今より上なら:動くもよし。残って「他社からこの提示がありました」と、事実を持って話すもよし。お願いではなく、交渉になります。

提示が今と同じか下なら:それも収穫です。今の会社が意外と払っていると分かれば、モヤモヤの根っこが消えます。

自分の経歴にいくらの値段がつくのかは、一人で考えても出ません。求人を眺めているだけでは、他人の値段しか見えないからです。外の人に見てもらうのが、一番早い。

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足元を見られない人になる

会社があなたの足元を見るのは、「この人は辞めない」と確信しているからです。だから、値段を付け直さなくても大丈夫だと思われている。

その確信を崩す方法は、大声で怒ることでも、辞表を叩きつけることでもありません。「いつでも動ける自分」になること。それだけです。

オファーを取れる人になった瞬間、実際に辞めなくても、扱いは静かに変わります。そして何より、自分の心が変わります。惨めさは、「選べない」から生まれるものだからです。

新卒の初任給に、胸がざわついた夜。あの悔しさは、あなたが真面目に働いてきた証拠です。

ただ、そこで新卒に嫉妬して、愚痴って終わる人は、来年の今ごろ、また同じ夜を過ごします。会社は、あなたが「どうせ辞めない」と思っている限り、値段を付け直してはくれません。

比べる相手を、今日から変えてみてください。目の前の新卒ではなく、外の世界で、あなたにつく値段へ。

自分の値段を知っている人は、もう、足元を見られません。

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