転職活動で内定が出たとき、提示された年収を見て「もう少し交渉できないかな」と考えたことはありませんか?
もし内定通知書をもらってから交渉しようとしているなら、それはもう手遅れです。
私も過去にそれをやってしまい、最初に提示された金額のまま入社することになりました。交渉の余地はゼロではなかったはずなのに、正しいタイミングを知らなかっただけで、何十万円も損をしてしまった可能性があります。
年収交渉には、誰も教えてくれない鉄則のタイミングと、絶対にやってはいけないNG行動があります。
1. なぜ内定が出た時点での年収交渉は遅すぎるのか
内定をもらってから交渉しようとしても、金額がひっくり返ることは滅多にありません。なぜなら、内定通知書があなたの手元に届いた時点で、企業の社内では「この人にはこの金額を出す」という決裁(稟議)がすでに下りてしまっているからです。
一度決まった社内の書類を、一応募者の「もう少し上げてほしい」という理由だけで白紙に戻し、社長や役員のハンコを貰い直すのは、採用担当者にとってめちゃくちゃ面倒な作業です。
つまり、内定が出た時点ですでに勝負はついています。交渉を動かせる本当のタイミングは、もっと前にあります。
2. 鉄則のタイミングは最終面接の直前、エージェントに文字で伝える
自分で企業に直接「年収を上げてください」と言うのが苦手な人は、転職エージェントに丸投げして構いません。ただし、伝えるタイミングは最終面接の直前がベストです。
最終面接が終わると、企業はすぐに採用の合否と年収の査定に入ります。その前に、エージェント経由で希望額を企業側に提示しておく必要があります。
伝えるときのコツは、できれば上げてほしいというような曖昧なお願いにしないことです。
現在の年収と、同職種の市場相場を考慮し、最低でも〇〇万円、希望としては〇〇万円です。
このように、メールなどの残る形で具体的な数字をエージェントに伝えてください。エージェントも数字が明確なほうが、企業側の採用担当者と事前のすり合わせがしやすくなります。
3. 希望年収を伝えて内定取り消しにならないための防衛策
年収の希望を出すときに一番怖いのは、生意気なやつだと思われて内定自体が消えてしまうのではないかという不安ですよね。
このリスクを避けるための防衛策は、求人票に書かれている想定年収の上限を大きく超えないことです。
例えば、求人票に想定年収400万円から550万円と書かれている場合、あなたの経歴が必須条件をギリギリ満たすくらいであれば、450万円前後を狙うのが現実的です。ここでいきなり「600万円」と出すと、会社の予算枠から外れるため、内定自体が見送りになるリスクが高まります。
エージェントに伝えるときも、以下のセリフをそのまま使ってみてください。
求人票の想定年収の上限である550万円を希望します。ただ、どうしても御社への入社を第一に考えているため、社内規定で難しい場合は、いくらまでなら調整可能か事前に教えていただけますでしょうか。
この一言を添えておけば、企業側に熱意が伝わりつつ、予算が合わないという理由だけで一発アウトになるのを防ぐことができます。

4. 求人サイトと転職エージェント、どちらから応募するかで提示年収は変わるのか
年収交渉のタイミングと同じくらい重要なのが、どの窓口から応募するかという問題です。
結論から言うと、企業の想定年収の枠そのものは変わりませんが、実際にあなたに提示される金額は、求人サイト経由のほうが少し高めになりやすい傾向があります。
これは、企業が裏で支払っている採用コストの仕組みが原因です。
転職エージェント経由で採用が決まると、企業はエージェントに対して、あなたの年収の3割から4割近い手数料を成果報酬として支払わなければなりません。年収500万円の人を採用したら、企業は追加で150万円以上のコストを支払うことになります。そのため、企業は総コストを抑えようとして、本人への提示年収を低めに設定するブレーキが働きやすくなります。
一方で、求人サイトは最初に掲載料を払ってしまえば、何人採用しても追加の費用はかかりません。
つまり、企業から見ると求人サイト経由の応募者は、エージェント経由の応募者に比べて100万円以上安く採用できる、コスパの良い存在なんです。
もし、あなたが受けようとしている企業が求人サイトとエージェントの両方で募集を出しているなら、求人サイトから応募したほうが、手数料がかからない分だけ年収の上限枠を狙いやすくなります。
ただし、求人サイトからの応募は、すべて自分で年収交渉の仕込みをしなければならないというデメリットもあります。自分で交渉する自信があるなら求人サイト。プロに交渉を丸投げしたいならエージェント。この裏のコスト感覚を持った上で、応募先ごとに窓口を使い分けるのが賢い戦略です。
5. 入社後に頑張れば給料は上がる、という考えが幻想である理由
入社してから頑張れば給料は上がるだろう。そんな考えを、かつての私も持っていました。
しかし、大企業と中小企業のリアルな昇給額のデータを見ると、その考えがいかに甘いかが分かります。
ここ最近の物価高に伴うベースアップラッシュにより、大企業の平均昇給額は月額1万5000円から1万9000円ほどに達しています。しかし、これは日本全体で見ればごく一部の話です。日本の雇用の大半を占める中小企業の場合、実際の平均昇給額は月額4000円から6000円程度にとどまるのが現実です。
ここで、残酷な計算をしてみましょう。
もしあなたが転職時の交渉を遠慮してしまい、本来交渉できたはずの金額より「月給が2万円低い状態」で入社してしまったとします。
中小企業の平均的な昇給ペース(月5000円)で、この2万円の遅れを取り戻そうとした場合、入社後に4年間、毎年欠かさず平均以上の高い評価を取り続けなければ追いつきません。
入社前のたった一回の交渉を諦めるだけで、入社後の4年分の努力が事実上、チャラになってしまうわけです。どれだけ成果を出しても、会社の評価制度や業績の壁に阻まれ、数万円上げるだけでも数年かかるケースはザラにあります。
転職時に年収を大きく動かせるチャンスは、入社前のこの一回きりしかありません。その一回の交渉が、次の数年間の収入の起点になります。

管理人まとめ
年収交渉は、内定後に動こうとしても手遅れです。勝負は最終面接の前に決まっています。
エージェントに具体的な数字をメールで伝える。希望は求人票の上限を大きく超えない。この2点だけで、交渉の成功率はぐっと上がります。
転職は契約です。条件をクリアにして納得した上で入社するのは、わがままでも生意気でもありません。
遠慮して損をするのは、会社ではなく自分自身です。最終面接の前の仕込みを、今すぐ始めましょう。

