「年収が下がるなら転職する意味がない」——一回くらい、そう思って動けなくなったことがあるんじゃないですか。
その気持ち、すごくわかります。下がったら生活どうするの、って話だから。でも正直に言います。「年収が下がるから動けない」という人のほとんどは、年収のせいで動けないんじゃないです。「動いた先に何があるか」が見えていないから、動けない。年収はただの言い訳になっていることが多い。
このコラムでは、年収を下げてでも動くべきケースと、絶対に動いてはいけないケース、その分岐点をはっきり書きます。
まず「年収」だけで転職を判断することの危険性
「上がるか下がるか」——転職を考えるとき、真っ先にここを見てしまう気持ちはわかります。でも年収という数字には、実は二つの全然別の話が混ざっています。「今の生活が維持できるか」と、「将来の自分がいくら稼げるか」。この二つは、まったく別の問いです。
今年の年収が100万下がっても、3年後に大きく伸びるなら実質「得」。逆に今の年収が上がっても、そこから先ずっと天井が変わらないなら、長期で見れば「損」になります。年収は「今この瞬間の数字」ではなく、「将来を含めたトータル」で判断しないと、正しい答えは出ません。
年収を下げてでも動くべき4つのケース
次のどれかに当てはまるなら、年収より大事なものを得るために動く価値があります。
①メンタルが壊れたまま今の会社にいるとき
「年収が下がるのが嫌で……」と言いながら、本当は月曜の朝が怖くて、会議に入るだけで動悸がする——そういう人がいます。その状態でも踏み出せないのは、年収が惜しいからじゃなくて、判断できるだけの余力がもう残っていないからです。
はっきり言います。メンタルが壊れたまま1〜2年居続けた人の多くは、転職どころか「働く」こと自体がしんどくなっていきます。そのコストは、年収差の比じゃない。年収より先に、まず「動ける体と頭」を取り戻すことが最優先です。少し年収が下がっても、自分が正常に機能できる場所に移ることは、逃げじゃなくて投資です。
②今の会社ではキャリアの上限が見えているとき
「このままいくと、5年後も同じ仕事をしている」——30代半ばでそう気づいた人がいました。当時の年収は550万。転職先は最初の1年だけ480万に下がった。でも3年後には720万になっていた。
下げた70万より、上がった170万の方が大きい。これだけの話です。でもその人、転職するまでの2年間「年収が下がるのが嫌で」動けなかったと言っていました。キャリアの天井が見えているのに今の年収を守ろうとするのは、「安定」じゃなくて「緩やかな機会損失」です。同世代のキャリアは、あなたが悩んでいる間にも進んでいきます。
③将来的に年収が大きく上がる業界・職種に移りたいとき
知人がメーカー営業からITコンサルに転職したとき、最初の1年で年収が80万下がりました。周りには「なんでわざわざ?」と言われた。でも4年後、前職の最高年収をとっくに超えていた。
「今年の差額」だけで転職を判断している人は、1年目の赤字しか見えていません。本当に見るべきは、5年後にその業界で自分がいくら稼げるか、その一点です。そこが今より明らかに高いなら、最初の年収ダウンは「損」じゃなくて「先行投資」です。動く前に、その業界の30代後半〜40代の年収レンジを先に調べてください。答えはだいたいそこに出ています。
④お金より「居場所・働き方」を大切にしたいとき
片道1時間半の通勤をやめて、年収を50万下げた人がいます。周りには「もったいない」と言われた。でも1年後に計算し直したら、交通費・外食費・スーツ代で年間30万浮いて、副業で20万稼いでいた。手取りはほぼ変わっていなかった。

年収が下がるなら動かない方がいいケース
動くべきケースがあるなら、動かない方がいいケースも当然あります。年収ダウンで転職して後悔している人を見ていると、だいたい次の3つに当てはまっています。
①転職後の生活が成り立たないとき
これだけはシンプルに数字の話です。転職後の年収が毎月の固定費を下回るなら、動いてはいけない。「まあなんとかなる」で動いて、半年後に貯金が底をついて焦っている人を何人も見てきました。お金の不安がある状態では仕事に集中できない。パフォーマンスが落ちて、また転職を繰り返す——という最悪のループに入ります。まず「ここまで下がると生活が回らない」という死守ラインを、感覚じゃなく固定費の合計で出してください。
②「なんとなく不満」だけで動こうとしているとき
「今の会社が嫌だ」「なんか疲れた」——その気持ちはわかります。でもそれだけで年収を下げて転職しても、高い確率で同じ不満を次の会社でも感じます。環境が変わっても、「何が嫌なのか」が整理できていなければ、問題はそのままついてきます。転職は逃げ場じゃない。年収を下げてまで動くなら、「次の会社で何を得たいのか」が自分の言葉で言えることが最低条件です。
③自分の市場価値を正確に把握していないとき
「年収が下がっても仕方ない」と思っているあなた、それ誰かに言われましたか?エージェントに「この経験だとこのくらいですね」と言われた数字を、一度も疑わずに受け入れていませんか。エージェントはあなたの年収を最大化するために動いているわけじゃない。自分の市場価値を把握しないまま動くのは、値札も見ずに買い物するようなものです。年収交渉をしたことがないなら、動く前に一度、複数のエージェントに話を聞いてみてください。相場は、自分で調べるものです。
年収より「何のために動くか」が先
年収を下げてでも動くべきかどうか——その答えは、年収の数字の中にはありません。「いくら下がるか」より先に、「その転職で何を手に入れたいのか」が言葉にできるかどうか。それだけです。
「年収が下がるから転職できない」と思っている人の多くは、年収が問題なんじゃなくて、転職後の自分がまだ見えていないだけです。そこがクリアになれば、年収の数字は自然と判断できるようになります。

「年収が下がるから転職できない」と思っている人の多くは、年収が問題なんじゃなくて、転職後の自分がまだ見えていないだけです。そこがクリアになれば、年収の数字は自然と判断できるようになります。

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